そうやって試験をこなし、残すところあと一日になった日。


あたしと隆治はいつものように、一緒に下校していた。


島にフェリーが到着し、二人でフェリーを降りた時だった。


タクシー乗り場の前に、スーツケースを片手にサングラスをかけた女性の姿が見えた。


その女性の髪型や服装はやたらと洗練されていて、島の住人ではないことはすぐにわかった。


30代?それとも40代くらいだろうか?


結構目立っているので、フェリーに乗り込む人、降りて来る人にジロジロ見られているようだ。


おそらく観光客だろうなと気にも留めず、隆治とその女性の前を素通りした瞬間だった。


「隆治」


その女性が急に隆治を呼び止めた。


慌ててキュッとブレーキをかける隆治。


あたしもビックリして、その女性を振り返った。


「隆治。久しぶりね」


その女性はゆっくりとサングラスを外した。