「母さん。

あたし、やっぱやだ。

おばあちゃんと暮らすのやだー」


前の座席の背もたれにアゴを乗せたまま、あたしは実に不愉快にそう告げた。


「はぁ?今さら何言ってるの。

母さんの方に付くって決めた時点で、こうなることはわかってたでしょう?」


「でも、遊ぶとこ全然ないんでしょう?

若い子の服を売ってる店もないんでしょう?

どこで買えばいいわけ?

カラオケは?ゲーセンは?」


あたしの左隣に座る母にすがるように視線を向けてみれば、明らかに呆れた顔をされた。


「電車に乗って行けば、大きな町に行けるわよ」


「でも、その前にこのフェリーに絶対乗らないといけないんでしょう?不便過ぎない?」


天候が悪ければ運航しないって言うし、下手すりゃ島に戻れないこともある。


本土に行くってだけで、このリスク!


まるで、島に閉じ込められる気分だ。


「仕方ないじゃない。東京とは違うのよ」


「いやぁぁーーっ。あたし退屈で死んじゃうーーー!」


「すず、うるさいっ。ちょっと黙ってなさい!」