マチェリラは貴未の質問に答えず、視線を落とし気味に呟いた。

場の空気に慣れず、貴未と日向はお互いの心中を探るように目を合わす。

「玲蘭華、ヴィアルアイ。この名前を聞いたことは？」

そう言い終わった後一呼吸を置いてマチェリラはゆっくりと顔を上げた。

そして二人の表情を見る。

日向は知らなかったのだろう、何を言われているのか分からず少し困惑しているように見えた。

それが演技かどうかはマチェリラにはすぐ分かることだ、彼は嘘を言ってはいない。

そして貴未は。

「なんで…。」

肯定の意味を示す反応にマチェリラの表情は一気に切ないものへと変わった。

何故その名前をマチェリラが知っているのか、そんな思いが滲み出ていたのだ。

マチェリラの叶わぬ願いが打ちのめされ膝から崩れ落ちそうな気持ちを必死に堪えて留まる。

「もう遅かった…なんてことなの！」

しかし悔やみきれない思いからマチェリラは手で顔を覆った。

貴未たちには彼女の行動や言葉の意味が分からず困惑するだけ、特に貴未はカルサの周りの事情を少しながら知っているだけにマチェリラの言葉に強く反応する。