「いい人に出会えたのね。」

「ああ!その国の王様なんだけどな。」

住む所も金もない、途方に暮れた状況を救ってくれただけではない。

見ず知らずの自分を受け入れて、役目や力まで与えてくれた大恩人だと嬉しそうに貴未は続けた。

「本当に偉大な人だよ、カルサ・トルナスは。」

やはりそうだったかと納得している日向の傍でマチェリラの顔つきが変わった。

「マチェリラには信じられない話かもしれないけど、その世界には魔法みたいな力を持つ人がいるんだ。王様もそうでさ…。」

「貴未。」

楽しそうに話す貴未の言葉をマチェリラは初めて遮る。

その表情は声と同じように恐怖を含んだもの、彼女のあまりの変わりように貴未は少し不安が過った。

「どうした?マチェリラ。」

マチェリラの頭の中で今までの貴未の言葉が反響する。

嘘だ嘘だと否定しながらもしきれない憤りが表情に表れていた。

「今の話は本当なの?カルサトルナスって…じゃあ貴未は今オフカルスに!?」