「目が覚めたときに手にしていたものが、これなの。」

そう言って両手で〈永〉を持ち上げてみせた。

マチェリラは首から外して貴未の手の上に乗せる、あまり重みを感じさせない球体はあの日の記憶より小さく思えた。

時が過ぎた分大きくなった貴未の手に収まるようになったのだろう。

あの時確かにこれは永が持っていたものだ、だから貴未はずっとカリオへ帰ることが出来なかった。

永が必死の思いでマチェリラに託したカリオへの軌跡。

「気を付ける…。」

もう一度呟いた。

永の気持ちを考えても、マチェリラの行動を考えてもそんな軽い話でないことは伝わってくる。

しかしどれだけ頭の中を掻き巡らせても肝心な意味が分からなかった。

「マチェリラ、それで永は?」

貴未の言葉にマチェリラは複雑な顔をして首を横に振った。

「分からない。それ以来、永から何も連絡がなくて。ただ…あの時の永の声は尋常な雰囲気ではなかったから。」

「だから、俺を待っていた。」

添えるような貴未の言葉にマチェリラは微笑むことで答える。