永の姿がある訳ではない、ただ声だけがマチェリラを求めていた。

どこにいるのと尋ねても届いていないのか彼女はマチェリラの名を呼び願うばかり。

そんな夢が何日か続いていた。

「でもある日、私たちは通じあったの。」

相変わらず姿は見えない、でも確かにお互いの声は届いていた。

声だけで手と手が繋がっているような感覚に、二人は、特に永は心の底から安堵したのだ。

しかしマチェリラがどこにいるのかと尋ねても、永は明かさずに必死の声でマチェリラの安否と貴未の居場所を尋ね返した。

自分の無事と貴未が行方知れずだということを伝えると、永は瞬時に判断しマチェリラに願い出たのだ。

「貴未に気を付けてと伝えて。」

それが永が残した言葉だった。

「気を付ける?」

貴未の聞き返しにマチェリラは深く頷いた。

とりあえず色々な想像をしてみるが、数ある記憶を思い返しても可能性を感じても決定的な物にはならない。

時を超えて、空間をも超えて二人が伝えてくれた警告にしては軽すぎるものだった。