「そうだな。」

複雑な表情は肩越しに少ししか見えなかったがハワードには分かっていた。

「俺を死んだことにすれば良かったのに。馬鹿な奴だ。」

カルサの代わりをやってしまった事でサルスは自分の存在を消してしまった。

影でしか生きられない人生を自分で選んでしまったのだ。

その事をカルサは悔やんでいた、しかし。

「それは陛下が仕向けたことでは?」

低く突き刺さるように響くハワードの声にカルサの笑みは自然と消えた。

国王であり御劔である雷神がいなくなるのと、秘書官がいないのとではあまりにも重さが違いすぎる。

サルスは国の事を思って自らの存在を消した。

ハワードが考えるようにカルサはそうすることを分かっていたのだ。

「当たり前だ。国を守るのが俺の務めだろう。」

カルサは笑っていなかった。

お前も同じことを言っただろうと責められているようにも聞こえてハワードには居心地が悪い。

そこには国王としての威圧を放つカルサがいた。

ゆっくりと振り向いたその姿にはもう何も言わせない雰囲気が漂っている。