圭は少し振り向いたが微笑むだけでまた前を向き、声の調子を上げて言った。

「さあ、もう着きます。」

少しだけの階段を上りきると屋上に繋がる扉を開けた。

隠し扉で閉ざしていたわりには軽い音を立てて木製の扉がその道を開けていく。

「どうぞ。」

いつのまに時間がこんなにも経っていたのだろう、光り輝く月と満天の星空が三人を迎えてくれた。

「うわあ…。」

その迫力には思わず声が出る。

口を開けたまま見惚れてしまうほどの星空、まるであの星空に吸い込まれてしまいそうな感覚に陥る。

そんな感動から我に返り、貴未は圭の方に意識をやった。

圭も空を仰いで同じ様に星を見ている。

「ここに扉が?」

貴未の声で一同の視線は天から逃れた。

圭は頷くがここはどう見てもただの屋上、石で作られた古来からある造りであること、それ以上には思えない。

わざわざ隠し扉で守る程のことかと疑問が浮かぶ、ただの屋上ではないかと。