「やはり、それですか。」

先に沈黙を破ったのは圭だった。

誰も口を開かず静かに圭の言葉に耳を傾ける、彼女が話す内容の意味が分からない以上は何の言葉も出てこなかった。

「貴未、貴方は帰れなくなってしまったのですね…。」

踏み込んでいた足を上げて貴未の身体が後ろへと下がっていく。

貴未の頭の中で何度も繰り返されるあの記憶、決して忘れることはない過去の戒めが再び彼を縛り付けていた。

「君は…何を知ってる?」

少しの嫌悪感と驚きを隠せない貴未に微笑むと圭はキースに目で合図を送った。

キースは頷き数歩下がって頭を下げる。

貴未たちは突然動いた状況にただ見ていることしかなかった。

「行きましょう。扉へご案内致します。」

圭は胸に手を当てて貴未に申し出た。

半信半疑ではなく、疑いの方が明らかに強いがここで断ることの意味は無い。

彼女の言う先に何かあるのだとしたら大きな一歩になると貴未は進むことを決めた。

いざとなれば逃げることは出来る、それは彼の中で大きな強みだ。