「マチェリラに会いに来たんですよね。」

大きな部屋に圭の声が響く。

騒動の後、貴未と日向そして圭とキースを残して群衆は去ってしまった。

古くからある為かこの教会の敷地は広い、そして歴史がある分それは建物の構造にも反映されているようだ。

いま貴未たちがいる部屋もある種隠し部屋みたいなものだった。

それにしても空気が違うのは不思議なものだと部屋の雰囲気を感じながら貴未は思う。

「貴未さん?」

問いかけに何の反応も見せない貴未を覗き込むように圭は名を呼んだ。

「あ、ごめん。」

集中を欠いていたことに謝ったが圭の横にいるキースが気になり思わず目をやった。

本人はもちろん圭もそれに気付いたようだ。

「キースの非礼はお詫びします。全ては私とこの場所を守る為に行ったこと、どうか許してください。今も私を守る為にここにいます。」

圭は見た目からは想像できない程に落ち着いた口調で話した。

それは上に立つ者の姿勢に似ている。

「君は…。」