「あ、いきなりすみません。」

許される状況じゃないと判断した貴未はまず最初に謝罪をいれた。

しかし態度も気持ちもその次を求めて動こうとしているのは傍目で見ても明らかだ。

そんな彼を制する手が出され、次の発言は許されなかった。

貴未の目前に手を突き出したのはカルサ、肩を掴んで止めたのは千羅だ。

「失礼した。アレド殿、ロワーヌが連れてきた者の中に少女は見かけなかっただろうか。」

「覚えておらぬ。」

「この者の身内なのだが。」

「ならばその目で確かめればよい。わらわに問わずとも行けばよいではないか。」

もっともな言葉は貴未から声を奪ってしまった。

踏み込む前に少しでも情報を欲しがった欲を晒された気分だ。

「魔界に人間が居ることは間違いないんだ…可能性はかなり高いな。」

千羅の呟きに沈んでいた貴未の顔が上がる。

そうだ、その為にここまで来たのだ。

「…だな。行くしかない。」

貴未の心が決まったのを見守ると、カルサは先に進むためにアレドに向き直った。

この国に唯一の城を全体的に見渡せる場所に来れたのはありがたい、これからの道筋が出来ていくなかで彼女には感謝しかなかった。

「アレド殿、ここまでの案内に感謝し…」

「騒ぎを起こすつもりか。まあ…そうだろうがな。」

言葉を遮って突き付けられた疑問にカルサは瞬きを重ねる。

言葉を選びすぐに答えようと口を開いたがアレドは答えを求めていないのだと言わんばかりに吐き捨てた。

「好き勝手されるのは好まん。だが止める気もおきぬ。」

「騒ぎは起きる。最小限に抑えるつもりではいるが、約束はできない。奪われたものを取り返すために戦うつもりでここにいるんだ。」

「奪われたもの、のう。」