「来てほしいのか?」

そしてそれに挑発的に答えるのもカルサだ。

「好きにすればいい。強いることはせぬ。」

余裕の表情を一切崩さずに返してくるのも流石というべきだろうか、その言葉を捨て台詞に再び歩き始めた。

次はもう振り返りもせずに進んでいくのだろう。

「…どうしますか。」

千羅が決断を迫る様に声をかけ、カルサは明確に答えることなく歩き始めた。

それは先に進んだ彼女に追い付く為だとすぐに分かる。

カルサが決めたことに多少の戸惑いはあるものの、千羅を含む全員が何も言わずに後に続くことにした。

前の方から微かに笑い声が聞こえてくる気がして穏やかじゃない。

しかし、彼女と共に進むことでさっきまで近付こうとしていた魔物たちの気配が一気に薄れたのも感じていた。

一体何者なのだろうか。

「ここはレテイシアなのか?」

カルサが声を少し張り上げて前を歩く彼女に問いかけた。

「その様だな。」

曖昧な言い方にも聞こえるがそれは即ち正解であると伝えているのだろう。

間違いなかった、ここはレテイシアなのだ。

だとすればここにリュナがいる、おそらく永もライムもいるに違いない。

そう考えるだけで胸が熱くなり駆け出したくなった。

すぐにでも会いに行きたい、助け出したい、でもそれが得策でないことは分かっている。

ヴィアルアイもここに居る筈なのだから、この先何が起きても不思議ではないのだ。

そして辿り着いた瞬間からそれはもう始まっている。

この目の前を歩く彼女こそがそうだ。

振る舞いや言葉遣い、感じる力の強さからも何か他とは違う地位を持っているであろうことは予想できる。

そして対応によっては態度も変わる様な気がした。