突然入ってきた声に一同は視線を向けた。

近付いていた気配の主はどうやら声の主らしい、まだ目が慣れず暗くてよく見えないが人型のようだ。

となれば知能の高い魔族であるということになる。

声の高さからして彼女とみていいだろう声の主は木の上から颯爽と飛び降りカルサたちの近くに降り立った。

その強さは気配で分かる。

「何を知りたい?わらわはぬしらが何者かを知りたい。」

一歩ずつ近づいてくる様はまるで一国の王の様に優雅で堂々たるものだ、威圧も伴っている。

「奇遇だな。俺もお前が何者かを知りたい。」

それに応戦したのは他ならぬカルサだった。

まさか応えるとは思っていなかった一同はカルサの発言に驚いて目を見開いたが本人は構わずに向かい続ける。

「ほう…それはそれは。」

目を凝らせばようやく慣れ始めた目で分かるようになってきた。

どうやら彼女は不敵な笑みを浮かべてこちらを品定めしているようだ。

「おそらくは風神とやらの関わり合いだろうが、連れ戻しにでも来たのか?」

「案内でもしてくれるのか?」

まるで言葉遊びを繰り返すように交わされる会話は心臓に悪い。

わざとなのか偶然なのか、出された剣をひらりとかわす様に彼女の手はなかなか決まりそうになかった。

しかしそう感じたのもほんの僅かな時だけだ。

「面白い。望みとあらば案内してやろう。」

それは高い位置からの言葉だった。

暇つぶしに相手をしてやろう、そんな意図が見えて貴未は目を細めた。

歩き始めた彼女にすぐ付いていこうとする者はいない。

「来ぬのか?」

全く動かない気配に彼女は肩越しで問いかけてきた。

相も変わらず愉快そうに、挑発的にも見える表情でカルサたちを誘う。