顔を向けても貴未は前を向いたまま、しかしその表情は緊張の面持ちではなく普段の様に笑っている。

「俺と、かな。」

日向の質問に答えながらもキースと貴未の睨み合いは続いていた。

少しずつ少しずつ貴未たちとの距離を縮める群衆に追い込まれていく。

貴未の頭の中は自問自答でいっぱいだった。

どうする。

いくら身の危険とはいえ相手に危害を加えることなんてできない。

彼らは聖職者であり、ただ警戒ゆえの行動で何の否もないのだから。

巡る考えの中で貴未の答えは決まった、というよりも最初からそうだと決めていた。

日向の腕を掴むと背中で彼が振り向いたのを感じた。

急に手を掴まれた、その行動の意味に日向の頭はついていけずにただ驚いて貴未を見ている。

「落ちるなよ？」

「え？」

何をと尋ねようと思ったその瞬間、自ら光を発し貴未の背中から光る翼が生えた。

金色のような銀色のような光に包まれた貴未を、誰もが衝撃を受け言葉を無くしてただ見つめている。