あまりにまっすぐな言葉と視線に打たれ言葉も出ない。

しばらく見つめ合っていたかと思うとカルサの瞬きをきっかけに解かれ、沙更陣に背中を向けて仲間のもとに戻っていった。

カルサの香りが鼻を掠める。

それぞれが覚悟を持った顔付きでカルサを迎え、その先に行こうとしていた。

もう、迷いはない。

待ちわびた様に声をかけたのは千羅だ。

「行きますか?」

「ああ。貴未、レテイシアへの道は分かるのか?」

「多分ね。俺が間違って解釈してなければ。」

そう言って貴未は握り拳の腕を前に伸ばした。

「必ず辿り着いてみせるから、絶対に離さないで欲しい。…この腕がちぎれそうになっても気にしないで俺を信じて掴まり続けて。」

もう片方の腕も伸ばして周りを促す。

「頼んだ。」

カルサが貴未の腕を掴んだことを皮切りにそれぞれが倣ってその身を委ねた。

両腕に感じる温かみは命の印だ。

誰も置き去りにはしない、絶対に離れない。

あの日、永の手を離してしまった時を思い出して貴未は決意した。

「よし…行くぞ。」

貴未の背中に銀色の翼が現れる。

耳鳴りの様な音が周囲を包んでいくのも全てあの時見た翼と同じだと日向は静かに息を飲んだ。

緊張から呼吸が荒くなる。

それぞれが覚悟を決めてその時を待つ中、ラファルを抱えたカルサが不意に首だけ振り返って沙更陣を見た。