「ウチも好きやったのに、愛してたのに…っ。何でもっと…!!」

あの頃よりも伸びた紅の髪が彼女の顔を隠して見えない。

居た堪れない気持ちが貴未の中で膨らんで歯を食いしばった。

それはカルサも同じだったようで、しっかりと目を開いたまま紅と聖の姿をその目に焼き付けている。

「…ウチは行くで、カルサ。あんたらと一緒に行く。」

「紅、しかし…。」

「自分の役目はそこにある。何も成し遂げられないままなんて絶対に嫌や。」

そう告げて顔を上げた紅は強い意志と光をその目に宿してカルサを睨み付けた。

挑む様なその目にカルサは言葉を失う。

「あんたを監視する為にも、ウチは行く。」

残された者の痛みを、この身で証明して分からせるためにも紅はカルサの傍にいることを決めた。

自分のこの力がカルサにとって必要なものであることはテスタから聞かされている。

紅はカルサが断れないことを知っていて突きつけたのだ。

「…分かった。」

それ以上の言葉を見付けることは出来ない。

小さく頷いた紅は再び聖を見つめて目を閉じた。

この戦いの後、きっと彼女はその身を終える覚悟だろう。

カルサはまた新たな決意を背負い固く目を閉じた。

戦いとはそういう事だ、戦うとはそういう事だ。

それでも進める道は選ぶことが出来ない。

「聖、感謝している。」

頭を下げてカルサはその部屋を後にした。

紅は柔らかく微笑んで聖にキスをする。

「行ってくる。」

誰もいなくなったその部屋で、聖は微かに笑みを浮かべたのは幻か。