寂し気に問いかける紅にカルサは目を見開くばかりで何も答えられなかった。

次第に紅の瞳が潤み出し、その変化によってカルサはようやく瞬きを取り戻す。

「リンの国で…うちに出来ることはもう何も無かった。命を長らえる理由なんかない、せやけどうちは忠誠心の近い家臣たちによって生かされた。これまでの功績や言うて…ちっとも納得せえへん理由を突きつけられて、家臣は身代わりに死んでいった。」

「紅…。」

「シードゥルサでうちは家臣になった。情がわいて…この国や大切な人を守るために自分に出来ることはやろう思た。でも結局うちは…また守られて終わりや。」

あの時、結界石の間について見たのは砕かれた結界石の残骸と冷たい表情の聖だった。

「うちはもう…この国にずっとおるつもりやったんよ。何があっても、どんな事が待ってても、もうここで…自分のやらなあかん事やって役目を果たそう思てたんよ。…それは聖も同じやったんちゃうんかな。…せやけど。」

堪えきれず紅は涙を流す。

その表情に彼女の強い感情を感じてカルサも貴未も言葉を失った。

「この国は終わりや、行くぞ紅。」

聖はそう吐き捨てて紅に手を差し出したのだ。

「うちを守るために言うたんは分かる。言いたくて言うたんやないって今は分かってる、せやけどあの時はどうしても許せんくて…うちは塔から飛び降りたんや。」

「飛び…!?」

「命を落とすためやない。この国の兵士として戦う為に。」

結界を何重も積めば衝撃を受けるクッションなる、紅はそうやって広場に降り立ったあと剣を持って魔物と戦い始めた。

守りたくて、役目を果たしたくて、成し遂げられなかった任務を別の形でも応えられるように必死だったと当時の自分を振り返る。

「終わりのない…次々襲ってくる魔物に対処しきれんくて…そうやろな。冷静さに欠けた戦い方してたらそうなるよ。やからうちもすぐに囲まれてん。」

幸いにも近くに居た兵士たちや女官を逃がすことは出来た。

それだけでいい、満足の気持ちを胸に迎え撃っていたら聖が参戦したのだ。

何とか全部倒せたが、紅は体力の限界と傷を負ったことによって動けなくなってしまった。

それでも気力で聖に告げたのだ。