「その名は限られた者しか知り得ないこと。貴方はどこでその名を知ったのか…力付くにでも教えていただかねばならない。」

キースの声に周りの聖職者たちが構え僅かに足を進める。

近付いてくる彼らに動揺し日向は貴未に寄り添うように彼の名を呼んだ。

「貴未。」

キースは無言で左手を胸の位置まで挙げる。

それを合図に群衆が動き出し、今度は遠慮なしに貴未たちとの距離を縮めていった。

日向は戦う本能からか背中を預けるように貴未に寄り添う。

いつのまにか彼の肩には動物に姿を変えた火の精霊・祷が現れ、キースの横で守られている圭はそれに気付いて表情を驚きのものへと変えた。

「貴未。これちょっとヤバいよね?」

「かなりな。」

二人とも顔は笑ってはいたが、もちろん内心穏やかではなかった。

貴未の中でいくつもの思いが巡る。その中でたった一つ既に決めている事があった。

「大丈夫だ日向。お前を無事に連れて帰るって約束してるから。」

「え…誰と?」

予想外の言葉に日向は思わず聞き返した。