守れるか、それだけが頭の中を支配している。

「おやおや、迷い人ですか?」

ここで見付かる訳にはいかない、強い焦りと緊張が聖を前へと押し上げた。

最悪は目の前にいる人物を討たねばならない。

何の罪もないこの人物を。

「迷い人なんて久しぶりですね。どちらの世界からでしょう。」

その言葉が聞こえたと同時に霧が晴れ、視界が開けてきた。

「…え?」

思わず声をもらした聖は目を見張って周囲を確かめる。

さっきまでは森の中にいた筈だった、それなのに無数の扉が並ぶこの場所へ一体いつの間に来たのだろうか。

見たこともない景色、そして目の前に立つ人物の服装や雰囲気も今まで出会ったことのないものだった。

「なんや…これ…。」

衝撃が驚きに代わり、それが恐怖心に育っていくのが分かる。

ここは一体。

「ああ、リンの国からですか。扉が少し開いてますね。」

背筋が凍るような衝撃に聖は思わず潜めていた短剣を取り出し構えた。

「お前、誰や!?」

「おやおや物騒な…。」

そうかわすと目の前にいた人物は聖たちの横を距離を保ってすり抜け扉を閉める。

「これで誰も入っては来れない。…追われていましたか?」

攻めるような言葉に聖の目に力が宿った。

それは殺意と敵意を含んだ鋭い視線、しかしそんなに強い気持ちでも流されてしまう。

「ここは界の扉。世界中に繋がる扉が集まる中心世界の1つ。私はここを任されているテスタ、という者です。」

にこやかな挨拶、全てを見透かし受け流す深みをもったテスタは目を細めて続けた。