「きゃああ!」

窓に身を乗り出して遠くを窺おうとした瞬間、風ではない風圧の様なものが遅い紅の身体が揺れた。

顔を上げれば本宮から巨大な火柱が立ち上がり、さらに威力を増していく様子が見える。

「なんで…?」

また一つ火柱が立ち上がる。

「なんで?音なんか聞こえてけえへんのに…。」

そこまで口にして気が付いたことがある。

南宮の太子には風を操れる人がいる、東宮には音を操れる姫がいる。

そして公にはされてはいないが、東宮、次の帝とされていた筈の太子は炎を操れると。

「企みは太子たちの事やったん?」

だとすれば西宮太子である聖にも声がかかった筈だ、なのに自分は何も知らされてはいない。

「だから…?」

企てを知らされたときの聖の言葉に不思議な点があった。

召集には応じない、紅は自分が本宮にあがることだと思っていたが言葉が似合わないと気になっていたのだ。

それもそうだ、聖はおそらく太子たちの呼びかけに対して出したものだったに違いない。

打診があったのだ、企てにのるようにと。

しかし相手は毒を操る帝親子、そううまくいくのだろうか。

「姫様!!!!」

戸を叩く音と同時に侍女が駆け込んできた。

ただならない様子に紅の心拍数は一気に跳ね上がる。

何かあったのだ。

「姫様、お逃げください!今すぐにお支度を!」

「どうしたのですか?」

「武装した民たちが宮に押し寄せております!太子と姫を差し出せと!」

「え?」