「聖が…自分でやったって…怖い顔しとったわ。」

あの時の事を思い出す度に胸が痛む。

「理由は?」

「この国の為やって。…こんなもんがあるから…あかんのやって言うてたよ。」

「そんなの…!」

「どういう意味だ?」

反論しようとする貴未を制するようにカルサがその真意を求めていく。

本人が話せないのであれば紅に問いていくしかない。

紅は十分な時間を取って息を吐くと重たい口を開いた。

「多分な…うちらの国の事を言うてるんやと思う。大きな力に飲まれて滅んだ国やから。」

「日向の話だと存続しているんだろう?」

「統率者が違うやろ。うちらの時代の、主となってた一族は滅んだ筈や。王の名前も違うしな。」

吐き捨てるような言葉にはまだ何かが隠されている、そう悟った二人は黙ったまま続く筈の言葉を待った。

きっとそれが紅の一番伝えたい事なのだと。

「懺悔の様なもんや。聞いてくれるか?」

カルサと貴未が頷いたのを確認すると、紅は聖を見つめて話始めた。

それは二人がシードゥルサに来る前のこと、まだ彼らが太子、姫と呼ばれていた頃の話だ。



聖と紅がいたのはリンと呼ばれる場所、そこは四人の領主と帝が統率する国だった。

帝が住む本宮、それを四方に分かれた四人の領主が守り固め、東宮、西宮、北宮、南宮と呼ばれる場所から国と帝を支えていた。

彼らは帝と同じ血族、そして珍しくも不思議な力を持って生まれる特色があったのだ。

聖と紅が生まれたのは西宮、父は西宮主と呼ばれ宮と領地を治めていた。

位が高き者の名は貴いものとされ、本当の名は隠され通称で呼ばれていたこの国では聖が西宮一ノ太子、紅は西宮二ノ姫で通っていたのだ。

兄妹であっても名を呼び合うことは禁じられた。

帝の血族と呼ばれる彼らには特殊な力があり、双子である聖と紅は結界を操る力を持って生まれてきた。

それは父である西宮主も同じだったらしい。