ナルからの指示に従って結界石の間に行き、それを守りきろうとしていた。

力を送り、国全体に散りばめた結界石の欠片たちを強化して集落や人々を守る。

それが自分の役割だと信じて、仲間たちの交戦に加わることなく己の行くべき場所を目指して必死で走った。

早くしないと、勝敗は自分の肩にかかっていると焦る気持ちをどうにか抑えて平常心を保つ。

失敗は負けに繋がる予感がしていたからだ。

「術がかかった扉も開けて、必死で最上階の部屋を目指してな。ようやっと着いた思たら…部屋の扉が開いとったんよ。」

「開いてた?」

「せや。…うちの前に誰か来とった、そういうことやな。」

「誰が…。」

貴未の呟きに何かを気付いたカルサは目を見開くと視線を迷いながらも動かした。

その先には彼がいる。

「聖や。」

皆の視線を一気に惹きつけた聖はピクリとも動かない。

「一体…どうやって!?」

目を見開いて言葉を失うカルサに代わり貴未が真実を求めて紅に詰め寄った。

想定内か紅も横目でカルサを確認した後諦めた様に小さく息を吐いて続ける。

「結界を扱うんは聖のが長けとる。」

結界は一枚の板ではない、いくつもの小さな板の集合体で出来るものだ。

聖の場合はそれがより小さく、正確に、密に作れるのだと紅は小さな立方体を作って見せて説明した。

結果として、それが扉を隠す一種の結界だとすればまじないでさえも破れるのだろうと目を伏せる。

それでも自分の力もそこまで劣っていないと苦笑いして見せるが、どうにも言い訳にしか聞こえない情けなさに竦めた肩も落ちる。

「着いたら…もう結界石は壊されとった。」

紅の視線の先は再び聖に戻された。