そこにいるだけで確かな威圧を感じる、ここで臆してはいけないと貴未は彼を真っすぐ見つめたまま口を開いた。

「貴未、と申します。彼は私の連れで日向。突然の訪問で失礼致しました。」

貴未の言葉に合わせて日向は小さく会釈をする。

キースは静かに首を横に振り貴未の言葉を受け止めた。

「マチェリラさんにお会いしたかったのですが…その、既に亡くなっていると先程伺ったもので。」

話の途中から貴未の表情が曇り始める。

あらかじめ覚悟はして受け止めた筈なのに言葉に出してしまうと切なくてどうしようもなくなるのだ。

そんな貴未の様子をキースはずっと注意深く見ていた。

「彼女とお知り合いですか?」

「はい、幼い頃に。」

どれくらいの月日が経っているのか分からないまま答えるのは躊躇われたが、腹を括った以上は偽りなくいくことに決めたのだ。

貴未は迷うことなく真実を口にしようとこの部屋に入る前に決めていた。

「そうですか。…確かに幼い頃から彼女はここにいました。そう聞いています。」

重い空気に貴未の不安は高まる。