「今でも思うの。私はここで倒れ、玲蘭華が近付いてくるのを見たのが最後の記憶だった。でも…。」

あの日の記憶を呼び覚まし軋むのは何も今始まったことではない。

しかしその度に重なっていく疑問はいつも圭の中に存在していて、思考を止まらせた。

「でも?」

マチェリラがその思いを吐き出すようにと誘いをかける。

圭は寄せていた眉をさらに深めて初めて思いを口にした。

「あの子は笑っていたのかしらって。」

「え?」

「あの子…何かを抱えていたんじゃないか。そう思って。」

考えを巡らせても、声にしたことでより深まった疑問に答えは見つからない。

最後の記憶、見えた景色はあまりにも曖昧で歪んでいるのだ。

それは力尽きていく時だったからといえば正しいのだが、それでも勘違いではないのだとも思う。

「何かを抱える?」

「だからこんな事を…。」

「だからってこんな事してもいいと言うつもり!?玲蘭華に殺されたシャーレスタンが!?」

信じられない。

非難に満ちた表情でマチェリラは声を荒げてすべてを否定した。

咄嗟に出た拒絶反応だったかもしれない、しかし一呼吸置いた今でもやはり納得したり同調することなど出来るはずがないのだ。

心が、身体が、細胞から全てで玲蘭華を否定している。

それが痛いほどに伝わって圭もかける言葉を見失ってしまった。