故郷のことよりも何より友人を失った事実が辛かった。

彼女がもうここには居ないなんて、死んでしまったなんて。

一体あれから何年経ったのだろうかとそんな事が頭の端によぎる。

「貴未。」

黙って見ていられずに日向は彼の名前を呼んでみた。

その後押しがあってか、貴未は顔を上げもう一度希望の光を見つける術を求めて男に問いかける。

「どなたかマチェリラさんと親しかった方はいらっしゃいませんか?」

ここで引き下がる訳にはいかない。

自身の故郷とはいえ大事な役割を持って貴未は今ここに来ているのだ。

かなり躊躇われたが貴未は覚悟を決めてその名前を出すことにした。

「カリオについて何かご存じな方は?」

予想通り男は先ほどよりも強い反応を示し、視線だけを動かして腕の中にいる圭を見た。

そして圭も連れて貴未に背を向ける。

「お待ちください。」

そう言い残すと二人は中庭を跨ぐ渡り廊下を抜けて奥に入っていった。