疑うというよりは、そうであって欲しいという願望が強かったのだ。

願い続けてようやく会えた時の感動は言葉に出来ないものだった。

環明の風が包んでいる、間違いない、リュナ・ウィルサと名乗るこの子がロワーヌと自分の子供であるセリナだと確信した。

あの頃は芽生えたばかりのほんの小さな命だったのに。

「嬉しかったよ。」

その感動は今でも心を震わせ沙更陣はその目に涙を浮かべた。

笑っている話している動いている、とても純粋な思いでカルサに恋心を抱いていることも分かった。

切ない感情も抱いたが幸せそうに笑うリュナの姿を見るだけですべてが満たされたのだ。

「親としてやれることはしてやりたい、でももうあの子もきみも既に手を離れて自分でその道を切り開けるくらいに成長しているんだ。…僕の出番はどこにもない。」

大丈夫、後のことは全て任せて守ってあげよう。

どれだけその言葉を言いたかったか分からない、しかし出会った時にはもうリュナは一人の女性として立派に生きていた。

困難に立ち向かい乗り越えようと戦い続ける素晴らしい心に成長していた。

「親はどこまでも子に固執する。それを断ち切るのは子供にしか出来ない事だ。」

そこまで親として生きたことは無いが十分にその意味は分かっている。

親としての沙更陣が微笑ましいのか、それとも彼の言葉に思いを馳せたのか、カルサは寂しげに笑みを浮かべるとその場から離れようと歩きだした。

「カルサ。」

思わず名前を呼んで引き止める。

「思い出話をしたついでに、色々回って懐かしんでくる。」

カルサにしては覇気がない答え、穏やかというには優しすぎた。

何より背を向けたままの言葉に沙更陣自身が言いようのない不安に襲われる。