「沙更陣も知っている通り俺は玲蘭華の前で自決をした。皇帝の力を使うことが出来たのは俺だけだったし、僅かな時間だったがこの後の事をどう考えても解決できるとは思わなかったんだ。だから…。」

「皇帝スターレンの裁判に委ねようとした?」

沙更陣の添うような言葉にカルサは小さく頷く。

「しかしスターレンは現れてはいない。何故だ。」

大方の予想は付いている、しかしカルサはおそらく沙更陣が真実を知っている気がしてあえて尋ねた。

この胸を貫いた時の話を玲蘭華としていたのならば自然と疑問が浮かびその答えを求めるだろう。


カルサトルナスが命を落とせばスターレンが現れるのではないか。


どうやらカルサの読みは当たったようで沙更陣の表情が曇り僅かにその視線を下へと逃げたのだ。

しかし惚けることは許されない、沙更陣は観念したように静かに口を開いて答えた。

「玲蘭華はきみの時間を止めたらしい。」

驚きはしない、予想が当たり玲蘭華の持つ感情の深い闇に触れてカルサは目を細めた。

「君が生まれ変わる為の身体が現れるその時まで…その身体を見付けるまで玲蘭華が消えゆく命の時間を止めて永らえたと言っていた。」



だって、ここにヴィアルアイがいないもの。いまスターレンが現れたら困るでしょう?



玲蘭華の答えをそのままカルサに伝え沙更陣は口を閉ざした。

怒りに狂うかもしれない、そんな予想をしていたが沙更陣の思いに反してカルサはどこまでも冷静だった。

それこそがカルサの推測していたことだったのだ。

誰よりもヴィアルアイを重んじて何よりも二人の位置を気にするのが玲蘭華だ、そこから考え付いたことに何の感情も動かない。