それを皮切りに玲蘭華は周りの人間全てに手を出し始める。

マチェリラもその中の一人だった。

目の前で兄であるフェスラが亜空間に閉じ込められ自力で助けようとしていたときに意識が薄れるのを感じたという。

その視界の中にいた玲蘭華の存在にこの力の正体が彼女だと気付いて強い感情を抱いたまま未来に飛ばされたのだ。

「シャーレスタンの事を考えれば生存者には容赦なく執着したということだな。レプリカにしてもアバサにしても…あいつは見逃さなかった。」

そう。

あの事件、あの惨劇の場にシャーレスタンもアバサもレプリカもいなかった。

シャーレスタンは儀式の為にと最も清らかな聖水を届ける為に泉に一人でいたところ、何人もの死者の魂の流れを感じたと話していた。

死者の魂を次へ導くのが神官シャーレスタンの役割、魂の群れの中に環明のものがあると気付いた彼女は迷わず保護をしたのだ。

そこでこのオフカルスに起きている異常事態に気が付いた。

環明以外にウレイのものも見付けたが保護が間に合わなかったと申し訳なさそうに首を横に振っていたのを思い出す。

神官が二人も命を落としたこの異常事態に儀式の中で何かとてつもない出来事が起こったのだと察知したが、次から次へ押し寄せてくる魂を導かなければいけないためそこから動くことが出来なかった。

しかし数が多すぎる。争いが起こったのだと判断したシャーレスタンは即座に臨戦態勢をとりつつ自分の役割を果たし続けた。

神官だけではない、委員会に属する委員たちも例外ではなかったことに背筋が凍る。

顔馴染みたちの魂を送り出す中で耐えきれずに涙を流していた。

一体何があったのだ。

保護が出来たのは環明ただ一人、しかし魂を保護したからといって彼女が再び息を吹き返す訳ではない。