「ジンロにも日向の記憶は?」

「…無かったと思う。僕が思うに…マチェリラやシャーレスタンの話からだと玲蘭華が直接手を加えた人には日向の記憶はないみたいだね。」

「直接?」

「日向の事を覚えているというレプリカは環明の記憶を貰った。僕の記憶が確かなら環明は玲蘭華が手を加える前に息を引き取っていた筈だ。」

沙更陣の考えは的を得ていた。カルサの頭の中でも絡まっていた糸がほどける様な感覚になる。

カルサの記憶でも、あの事件の最初の被害者は環明だった。

そうであるならば。

「生きている者しか記憶を操っていない、そういう事だな。」

沙更陣は頷いた。

このオフカルスに着いたとき、まず一番最初に確認したのは沙更陣の中に日向の記憶があるかどうかだ。

残業ながらやはり沙更陣の中に日向はいなかった。

瑛琳に日向を任せ倒れた貴未を千羅に預けて、カルサ、マチェリラ、圭、沙更陣は改めて互いの記憶を確認したのだ。

あの事件の後、命を落とす前もしくは意識が途絶える前に玲蘭華と会ったかどうか。

それは全員が頷いた。

「あの時の玲蘭華は我を失っていたのか、それとも本能だけで動いていたのか…誰にも分からない。ただあの感情の読めない顔で次々と仕掛けていった。」

それはカルサとマチェリラの記憶だ。

「僕が一番最初に眠らされたんだね。」

沙更陣の言葉にカルサは頷く。

ロワーヌが亜空間に閉じ込められて玲蘭華にすぐ戻す様に詰め寄ったのだ、そして眠らされた。