「僕たちはあまりに警戒しあっていたのかもしれないね。オフカルスについて察しながら探り合う形をずっととっていた。でもジンロは彼らしい態度をとっていたよ。」

「ジンロが?」

「きみがその身体で生まれてきた時、玲蘭華に宣言していたんだ。カルサトルナスは俺が守るって、玲蘭華の好きにはさせないってね。」

思いがけない言葉にカルサの目が大きく開いた。

たまらず手で口を覆い息をも飲み込んでその同様に耐えようとする。このオフカルスで再会した時のジンロの姿が鮮明に思い出されて目が熱くなった。

どれだけ冷たく突き放しても歩み寄ろうとするあの優しい笑顔が物凄く愛しい、触れられない今が物凄く切ないのだ。

皇子として生きていた頃、ラファルを連れてよくジンロの下へ遊びに行っていたのを思い出す。彼はいつも愛情のある文句を繰り返しては相手をしてくれていた。

剣の稽古をつけてくれたのもジンロだ。

兄の様な存在だとカルサはずっと慕っていた。

よくジンロといるところをウレイに見られては兄弟の様だと笑われジンロは嫌そうな顔をしていたのも思い出す。それが冗談であることもカルサは分かっていた。

ジンロとウレイはカルサを子供扱いせずに難しい話も傍で聞くことを許してくれていた、この知識の使い方も同時に教えてくれていたのだ。

それが今にも繋がるほどカルサの一部として沁み込まれている。

「ジンロは…?」

「僕にも分からない。見つからないんだ…どうやっても。」

「…そうか。」

目を閉じるカルサの中では感情の整理が懸命に行われている筈だ。

彼が再びその瞼を開けた時きっと一時的でも冷静さを取り戻しているだろう、沙更陣はその時を待った。

その時は沙更陣が思うよりも早く訪れ感心させられたのは言うまでもない。