「なあ、他の人たちはどうしてんの?」

「マチェリラと圭はそれぞれ思う場所があると言っていた。瑛琳はラファルと共に森の中へ行ったらしい。皇子は…沙更陣様と共にいる。」

「カルサが?」

「お互いに話があると言っていた。」

その状況を思い出しているのか千羅は遠い目をして呟くように言葉を続ける。

「千羅、行きたかったんじゃないのか?」

「いや。二人で話すのが一番だ。」

千羅の言葉を受けて貴未は改めて目の前に広がる雄大な景色をその目に映した。

なんという緑豊かな国だろうか、それこそ争いからは無縁の様な雰囲気に癒されていく自分がいる。

宮殿も広い、おそらく客人用の部屋だろうがこの部屋も広く豪華な造りだ。シードゥルサとはまた違った色の建物にただただ感心するばかりになる。

こんな場所に一人だけでいる沙更陣は一体どんな人物なのだろう。貴未はまだ会ったことのない人物を空に描いてみた。

沙更陣との話が終わればカルサはその内容を教えてくれるのだろうか、それとも胸の内に潜めてしまうのだろうか。

「こんな広い景色や建物の中でたった一人ってさ、どんな気分なんだろうな。」

古の民というくらいだ、それこそ数えきれないほどの長い年月を生きているに違いない。

環境の変わらないこの場所で生き続けるその感覚は話して貰えたとしても全て理解することは出来ないだろうとも思った。

彼がいつから一人かは分からないが自分であれば一週間で根を上げそうだと貴未は苦笑いをする。

せめての慰めはこの温かく穏やかな日の光のだと目を閉じた。

貴未が気にするその人物は今まさにカルサと向かい合い、日の光を浴びて寂しげな笑みを浮かべている。