昔、まだ今より幼かった頃はよく三人で話をしたのを思い出す。草原の上に座って、あるいは寝転がって、取り留めもない話を時間を忘れて話していた。

毎日が楽しくて、全身で感情を表現して素直に生きていたあの頃、思い出すだけで心が満たされる幸せだったあの時間を取り戻したい。

そんなことと言われても構わない、それがマチェリラにとって何よりも貴い思いなのだ。その為になら命だってかけられる、それがマチェリラの全て。

「恩や情だけで動くほど竜族は優しくないわよ?私は私の気持ちを重んじる、だから誰にも止められないわ。」

困惑しながらもマチェリラの気持ちを受け止めようとする貴未の耳に圭の微かな笑い声が届いた。

目を向ければ彼女は楽しそうに笑みを浮かべている。

これはマチェリラの本当の姿なのだろうか、よく分からないが貴未の中で諦めがついた。

マチェリラの思いは彼女自身のものだ、それを決めつけることは誰にも出来ない。

ならば受け止めようと貴未は微笑み頷いた。

「永を助けような。」

貴未はマチェリラの手を取るとまるで絆を固めるように何度も力強く振った。思いは同じと互いに確かめられる。

その勢いのまま貴未に抱きしめられるとマチェリラは最高の笑顔で貴未に答えた。

「ええ、勿論よ!」

その様子を見ていた瑛琳は日向を促す。先に行くかと視線で問いたのだ、しかし日向は首を横に振り断った。

それは遠慮をしている素振りではなく日向自身の胸の内にある固い決意を感じさせる。

堂々とした日向の姿に瑛琳は微笑んだ。

「あっちで待ってるから。」

そう囁いたあと、瑛琳はカルサを目指して歩き始める。