耐えきれなかったのか咄嗟に俯き震えた呼吸を繰り返す。

少し落ち着きを取り戻せたのか、ゆっくりと顔を上げて再びカルサに向き合った。

「一緒に行かせて、カルサ。」

燐とした姿、マチェリラの声にカルサは頷く。

「宜しく頼む。」

柔らかく微笑むカルサに答えるよう、マチェリラもまた潤んだ瞳のまま可能な限りの笑みを見せた。

そして視線を貴未に移しまっすぐに彼の元へ歩きだす。その表情はとても穏やかで幸せそうだった。

「マチェリラ。」

まっすぐ自分の所に向かってくる彼女に貴未は名前を呼ぶことしか出来ない。

貴未の前で足を止めるマチェリラの気持ちは清々しかった。

ようやく大きな一歩を踏み出せたような気がする、そんな達成感を掴んでいたのだ。

「私は命を懸けて貴未を守る。だから貴未は必ず永を助け出して欲しいの。」

「命って…俺にそこまでしてくれなくてもいいんだよ?」

「貴未が思うより何倍も私は二人に感謝をしてるの。私はただ貴未と永に幸せになってもらいたいだけ。」

でも。そう言おうとした貴未の口の前に人差し指を出しマチェリラは言葉を遮った。

小さく首を横に振り微笑む。

「また三人で他愛もない話を沢山するの。その幸せな時間を取り戻す為に私は戦うのよ。それが私にとって何よりの希望、これ以上のものは無いわ。」

貴未に答えるマチェリラの目はまるで夢を話す子供の様に輝いていた。