肩に力が入っている、彼女の勇気が目に見えて分かるがそれにしても珍しかった。

しかしそれはカルサだけの感覚なのかもしれない、シャーレスタンはよくマチェリラを子供扱いしていたしフェスラもそうだったように思う。

遠い記憶のあの頃はあまりマチェリラと言葉をかわさなかっただけなのだろうとカルサはぼんやり思った。

それを考えると何とも奇妙な関係だろうか。

「あの事件から今まで…私は途方も無い時間を生きてきた。言葉にできない孤独や不安をずっと感じて、消したくても消せない記憶に縛られてきたの。こんな人生、恨む気持ちの方が強いわ。」

マチェリラの言葉にカルサは頷いた。

以前誰かが言ったようにマチェリラと自分は似ているのかもしれない。

きっとカルサがずっと抱えてきたものと同じような気持ちでマチェリラも今まで生きてきたのだと心の中で納得した。

言葉にしようがないこの複雑な感情をお互いに持っている、それはどこか不安定な安堵に繋がるのだ。

被害妄想と言われても抱えてしまった感覚を長年積み重ねてきてしまった、その心は自由に捉えさせてほしい。

「私の目的は絶望から救い出してくれた大切な友人、永と貴未を守ること。二人がカリオに帰れるように命懸けで守ること。」

そしてようやくマチェリラは顔を上げ初めてカルサの目を見た。

痛い位にまっすぐ向けられるマチェリラの決意、それは再会したときから少しも変わらない。

噛みつくように挑んできたあの時も同じことを言っていたのだ。

「そして、この太古の因縁の終わりを見届ける。もうこれ以上縛られるのは嫌なのよ。」

「ああ。俺もマチェリラも…長く苦しんだ。もう終わりにする。」

カルサの言葉にマチェリラの目は潤む。きっと数えきれない出来事が思い出されたのだろう、口元に力が入り必死に何かを堪えていた。