「ありがとう、お願いしますね。」

「はい。必ず。」

短いやりとりだが二人を包む高貴な空気は太古の世界を思わせて周りの人間を釘付けにさせる。

やがて顔を上げた圭はカルサと向き合う為に数歩進んだ。

「カルサトルナス。私の目的はシャーレスタンの記憶に絡み付いた太古の因縁を終わらせる事。」

カルサは頷いた。

「そして…あの子たちを救う事。」

圭の視線はカルサから離れない。

この発言はカルサの目的を邪魔することにもなる、それを分かっていても圭は胸にある思いを口にした。

千羅たちが身構えているのを気配で感じるが彼女を後押しする声がさらにかかったのだ。

「それは私の願いでもあります。」

添うように告げたテスタにカルサは睨み付けるような鋭い視線を向ける。しかし相変わらず穏やかな笑顔のままでテスタは表情を変えなかった。

「貴方の邪魔はしないわ、カルサ。」

圭の声に再び意識を戻され、彼女の言葉に集中させられる。

改めて口にした名前は太古の物ではない、今を生きるカルサの名前だったのだ。

「私は私の思いを貫きたいだけ。ただ見届けたいの。…だから私も一緒に行かせて。」

ゆっくりとその手を差し出して握手を求める。

差し出された手は宙に浮いたまま、まっすぐ向けられた眼差しがカルサの答えを求めていた。

しかしカルサは何も応えず、ただ視線を合わせてそこから動こうとはしない。

圭は待つことしか出来なかったが意外にも早く終わりの時は来た。