日向を守る事が義務な理由を今は本人に語るつもりはない。

いつか記憶が甦った時に自分のルーツを知り、今は分からないこの状況を後々に理解するだろう。

それでいい。カルサはそう考えていた。

「裁判者がその腕を振り下ろす瞬間まで、俺は戦う。」

カルサの決意表明は千羅が望んだものだ。強く揺るぎない意志は待ち望んだものの筈なのに何故か胸が苦しくなる。

カルサの思いが強くなればなるほど、比例して千羅の想いも強くなるのだ。

それは彼の感情の昂りにも反映していた。

震える呼吸を整えるために落ち着けと深い呼吸を繰り返す。

「私は皇子を生かし続ける為に戦ってきました。それは今までもこれからも変わりません。」

カルサが分からないほど小さく頷いたのを千羅は気付いた。

「皇子と共に行き皇子を守り続ける。それが私の一番の目的です。」

千羅の強い意志と熱い思いが真っすぐにカルサへ向けられる。

強すぎり気持ちも受け入れなければいけないとカルサはゆっくりと頷いたのだ。

「じゃあ、俺も!」

まるで機を得たかのように威勢のいい声が広い空間に響いた。

右手を挙げた貴未がカルサと千羅の許へゆっくりと近づいていく。

「決意表明の場なんだろ?ちょうどいいじゃん、だったら皆の目的を再確認しようぜ。」

ちょうど入り口近くにいる瑛琳たちとカルサたちの間で貴未は足を止めた。両側に笑顔を向けて了承を得る。

「カルサの目的も聞いた、千羅の目的も聞いた。ここにいる皆はこれから戦う中で大切な仲間だ。少しの疑惑も無くしておきたい。だからここでお互いの目的をハッキリさせるのはいいと思うんだよな。」