国を出た時点で太古の自分に真っすぐ向き合う覚悟は決めていた。

目を逸らさずに、この先何が起きても自分がやるべき事、やると決めた思いを貫く覚悟を決めていたのだ。

翻弄されるな、心が強いか弱いかなんて関係ない。振り切って前に進み遣り遂げる事が大切なのだから。

「気を付ける。」

「記憶のことを話すつもりは無いのですか?カルサトルナス。」

「話せばあいつは俺に固執するだろう。それは良くないと判断した。」

「…時間の問題ですよ?」

「…分かっている。俺が少しでも時間を稼ぎたいだけかもしれない。」

あの太古の事件以来、ずっとこの使命を抱え共に生きてきた。それがどういう事か自分が一番よく理解している。

今はまだ自分が何者かを知らない日向にそれを押し付けるような真似はしたくなかったのだ。

嫌でも背負わなければいけない日が来るというのなら、少しでもそれを遅らせてやりたい。

どれだけ重くのし掛かってくるのかを身をもって知っているカルサにはその思いが強く出てしまうのだ。

こんな思いをするのは自分だけでいいと、そう考えてしまう。

「最終確認です、皇子。」

千羅の言葉に引き込まれるようにカルサは顔を上げた。

そこで初めて自分の視線が落ちていたことに気付く。

そして知らぬ間に入り口付近にずらりと勢揃いしていることにも気が付いた。

貴未を先頭にマチェリラ、圭、瑛琳と日向がいる。

「皆も来ていることですし、いい機会でしょう。皇子がこれから何をしようとしているのか、何が目的かお聞かせください。」