「お返事は?」

「わ、かった。」

千羅の迫力に圧されて思わず口の中で言葉がこもってしまった。

いつもと同じように怒られているはずなのに様子が違う。そう頭の片隅で感じた瞬間、鈍い痛みが頭の先からつたって全身に走った。

千羅がゲンコツでカルサの頭を叩いたのだ。

「…っいってえ!」

「気持ちがこもっているように聞こえませんでした。」

「鬼かお前は!分かった、覚えておく!」

「宜しくお願いします。」

頭を押さえたままのカルサに千羅は容赦なく言い放つ。

「戦うと決めたのであれば記憶に縛られすぎてはいけません。今のやりとりから見るにカルサトルナスは日向が関わると冷静な判断を見失いそうですね。」

「テスタまで言うか。」

「しかしその可能性は大いに有り得ます。テスタ様。」

厳しくも親身な言葉はこの先の危険因子を告げているとカルサには十分に伝わっていた。

確かに僅かながら自覚はある、シードゥルサからすぐに避難させたのも気になって仕方がないと自分で分かっていたからだ。

どの感情がそう思わせるのか、まだ自分の気持ちと向き合ってはいない。

その時期が来たのだろうか、それも逃げなのだろうかと考えては公務に追われていた。

テスタも千羅も正しい事を言っているのだ。