「暴走でないのなら何でもいいですよ、こっちとしてはね。あの力を爆発させられちゃ守りたいものも守れなくなる。」

「千羅。」

「皇子に気を付けて頂きたいことは自分を見失わない事、ただそれだけです。補い合う事こそがこちらの強みであり最強の武器だとお考えください。」

今までの千羅からこんな言葉を告げられたことなどない。

驚いたことが一番大きな理由だがカルサは目を大きくして少しの間固まってしまった。

意外だったと口にすれば千羅は怒るだろうか、しかしどこか嬉しい気持ちにくすぐったさを感じながらカルサは口元に力を入れる。

「そうか。」

「はい。」

そう応えた後、千羅はカルサに向けて小さく頷いた。

大丈夫だと、そう伝えているのだろうか。少なくともカルサにはそう言われているように感じて不思議と少しずつ気持ちが落ち着いていく。

「頼もしいな。…しかし日向だけは確実に守りきらないと。」

「…無礼を承知で申しあげますが。私には貴方の方が大切です、皇子。」

語気の強い言葉にカルサも驚いていたが、思いの外、力が入ってしまった声に千羅本人も驚いてた。

なかなかうまく届かない、届いたとしても変わるきっかけになれていない自分の無力さに腹が立つ。

「例え日向に付けと命ぜられても…私は皇子の傍を離れるつもりはありません。」

「千羅。」

「どんな状況でもその思いに変わりがないことをお忘れなく。」

何という強い眼差しだろうか、瞬きを重ねるたびに千羅の気持ちが溶け込んでくる。