「何が情けないのですか?」

塞ぎこみそうなカルサに問いかけたのはテスタだった。

その声に顔をあげたものの、やはり冴えない表情を浮かべているのはカルサにしては珍しい。

「全力を…出せなかった。」

「それが?」

「力が俺から離れていきそうな感覚を調整しながらやってみたが、怖くなったんだ。」

掌を開いては握る、その繰り返しを見つめていると次第に目の色が曇っていった。

一体何を考えているのかと千羅は不安を覚える。

「怖さの理由は?」

「力に喰われそうになった。」

仰々しい物言いなど一切しないカルサの言葉だけにその重みは辛くのしかかった。

千羅とテスタ、二人は顔をあわせて困惑の表情を浮かべる。

「このままだと一騎討ちは厳しいか。まあ、それをさせてもらえるかどうかも怪しいがな。ヴィアルアイの事だ一筋縄ではいかない。」

「その為に私たちがいるのですよ、皇子。」

「ああ。…そうだな。」

まるで小さな子供のようだ。

目の前に漠然とした不安を抱えて自分の力を見失っている。

しかしその中に光る強い眼差しは静かに次の手を考えているのだ。

千羅は少しだけカルサとの距離を近付け声をかけた。