「…千羅?」

「ちょっと…物騒ですよ、皇子。」

千羅の言葉を受けてカルサは力の放出をすぐに止めた。

圧力から解放された空間はゆっくりと元の静寂を取り戻していく。

「攻撃の力じゃなくて助かりましたよ。そうで無かったら私は八つ裂きです。」

「…じゃあ何故ここまで来たんだ?」

「意地、ですかね。」

千羅の言葉の意味が分からずカルサは眉を寄せて首を傾げた。

「近くにテスタがいるのに…攻撃魔法をする訳ないだろう。」

「ごもっとも。」

ますます分からない千羅の言い分にカルサは傾げる角度を深めていく。

「凄い力ですね。」

少し離れた場所で呟いたテスタの声が響いた。いつの間にか光の波は静まり辺りは平穏を取り戻している。

「全力ですか?皇子。」

「…いや。」

「そうですか。」

カルサのため息が聞こえる。

「情けない。」

呟かれた言葉の意味が分からず千羅もテスタも瞬きを重ねた。

一体どうしたというのだろうか。