「皇子?」

ラファルの身体に顔を埋めていたカルサの表情は千羅からは見えなかった。

様子を伺うように顔を動かすと少しだけ彼の表情が見える、それは必死でこの苦渋の決断に耐えようとするものだった。

この手を離さないことで助けを求めているのだ。

カルサが千羅を呼んだ表情で何を言われるのか想像がついた、だからせめて名前だけは言わせないようにと千羅は伏せたのだ。

今の千羅にはそれくらいしか出来ない、そして。

「必要な判断です。皇子。」

そう言葉を添えることしか出来ないのだと自分でも分かっている。

力のない言葉でも一人でやったことではないと感じて欲しかった、それだけで告げたことだ。

カルサの両手には二つの体温が感じられている。

傍にいるだけでいい、カルサにとって確かな絆がそこにはあった。