「千羅!」

瑛琳が叫んだ時にはもう彼の姿はなかった。

全力で駆け出しカルサのいる筈の場所へとただひたすら速度を上げていく。

場所がどこかなんて知らないが力の気配のする方向だけを求めて走って行った。

そしてさっきまで日向の訓練場となっていた場所へ繋がる扉をみつけると走る勢いそのままに開け放つ。

「カルサ!!」

千羅の目に映った景色は部屋中が真っ白なものだった。

しかしそれはカルサの生み出した光の波、台風のようにカルサを中心に雲のような光が次々と生まれてその波紋を広げていく。

「これは…。」

ここまで力を放出するカルサを見たことがない。

制限されないこの空間での勢いは止まらず、テスタも次第に押され始めていた。耐え切れずに態勢を崩した瞬間、千羅の腕が彼の背中を支え事なきを得る。

「千羅。」

「テスタ様、これは一体?」

巨大な力の放出、こんな力の使い方は戦闘以外ではしない。千羅は不安を隠せなかった。

何かがいるのか。それとも近付いているのか。

「練習の様なものです。己の力の限界を知る為に一度体験してみるよう伝えたのですが。」

「それでこの状態ですか。」

あまりに光が強すぎて中心にいるカルサの姿はうっすらとした影でしか分からない。

今あの中でカルサが一体どういう状況なのかこの場所からでは分かりかねるが、暴走ではないと信じていたかった。