険しさがやがて切ないものへと変わっていく。

カルサは視線を手元に落とすときつく目を閉じて現実と決断を受け入れようとしていた。

辛い選択であることを示している様子は見ている方にも負担を与えかねない程だ。

千羅は無言で立ち上がり俯き加減のカルサに近付いてそっと抱きしめた。

「おいっ!千羅なんだ!?」

突然の出来事にカルサは慌てて抱きつく千羅の身体を放そうともがく。

少し強めの力を入れていた千羅は簡単には離れず、代わりに穏やかな声がカルサに降ってきた。

「ラファルの代わりですよ。」

その言葉にカルサは動きを止めてラファルを見る。

まっすぐにカルサを見ている、とても穏やかな表情がカルサの瞳を潤した。

「ラファルが皇子を抱きしめたがっています。」

ラファルは身体をすり寄せ千羅の言葉を肯定するように何度もその存在を知らせた。

千羅は身体を放してラファルに譲る、しかしカルサの手が千羅の腕から離れようとしなかった。

右手でラファルの身体を抱きしめ、左手は千羅を掴んでいるのだ。