「貴未も来ている。すぐにでもオフカルスに向かうつもりだ。」

オフカルス、日向は頭の中で復唱した。

確かその名は特殊能力を持つ人達が集う場所、もしかしたら自分の記憶を取り戻すものがあるかもしれないと胸を高まらせ身体が持ち上がる。

「僕も…。」

「主?」

「僕もいきたい!」

さっきまでの力尽きた様子はどこへやら、目を輝かせて膝立ちまで起き上った身体は進む姿勢を見せていた。

勢い良く出された日向の言葉にカルサは少し驚いたようだったがすぐに冷静さを取り戻して短く答える。

「好きにしろ。」

その瞬間に日向に笑顔が咲いた。日向には問題がないから承認したという風にしか見えなかったが、カルサは内心穏やかではない。

オフカルスに行く事で記憶を取り戻してしまうのではないか。

そんな不安を抱えつつも無関心に振る舞った。

「ありがとう、カルサさん!」

無邪気に笑う姿は昔と変わりはないように思う。それもまた嬉しいような、歯痒いような、何とも言えない気持ちがカルサの身体中に広がっていった。

まだ力を使った姿は見ていないが十分に感じる、日向の火の力は強くなり確実に自分の物にしていっている。

これから先の戦いを考えればそれは望んでいた事なのだけれど。

「…いや。」

含む感情が多すぎてそれしか言えなかった。

何を言っていいか分からない、失われた記憶に触れそうで恐い。

カルサは自分が引き金で記憶が戻るのを恐れて今まで日向に近づかなかったのだ。

しかしそうも言っていられない時期が来ている。