それでも日向の目の輝きは失われてはいなかった。

「少しは…役に立てるかな…。」

「主。」

「横じゃなくてもいいんだ。後ろでも…遠巻きでもいい。」

視界に映る景色に浮かべる人物を思い、日向は拳を強く握る。

いつからか芽生えたこの気持ちに彼の今を全てかけた。

目を閉じても浮かぶあの姿は強く、それと同時に儚くも思えて奮い立たされる思いに駆られるのだ。

力になりたいと。

「主…。」

「精が出ますね、日向。」

背後からかけられた声にも反応が鈍いが、顔を少し横に向けることで反応を示すことができた。

限られた者しかいない空間では姿を見ずとも誰が来たのかすぐに分かる。

しかし今回は例外だったようだ。

「あっ…主!」

祷の反応に何かを感じた。その理由は日向自身の目で見たことにより理由が分かる。

「お迎えが来ましたよ。」

その言葉にゆっくりと振り返った。だいたいの予想は付きながらも、緊張して確認をする。

そこにはさっき声をかけた人物ともう一人、少し懐かしい顔があった。

お互いにしっかりと顔を合わせて確認しあう。

「カルサさん。」

最初に口を開いたのは日向の方だった。そして彼のこの一言で日向にはまだ記憶は戻っていないことをカルサは知らされる。

それは安心でもあり、そうでなくもあり、とにかくカルサは複雑だった。

目を凝らしたことによって感情が少し表に出てしまったが何もなかったように振る舞うのは慣れたものだろう。