「随分遠回しな言い方だな。気を遣ってるのか?はっきり言えばいいじゃないか、俺の親だって。」

吐き捨てるように言い放った言葉にサルスは耳を疑った。そこで思考が止まりそうになるがなおも二人の会話は続いていく。

「貴方の親ではないわ。」

「そうだな。俺の魂であるカルサトルナスの、だな。でもそんなことはどうでもいい。俺が聞きたいのは誰がこのことを知っているかだ。」

「それは貴方が御劔の雷神であるということ?」

「いや違う。」

そう切り捨てるとカルサはゆっくりと立ち上がって膝をつくナルを上から見下ろす形をとった。座っていればカルサの方が高くなる。

「俺が太古の国から飛ばされてきた人間であること。そして太古の因縁を終わらせる為に皇帝を呼び寄せる鍵であることだ。」

その瞬間、ナルの表情が泣きそうなほどに切ないものに変わり口元に力が入った。

「やっぱり…そこまで知ってたな。」

ナルはバツが悪そうに目を伏せてカルサの視線から逸らす。

「デルクイヤ様、ユーセシリアル様には貴方が雷神であることと、大きな使命を持って生まれてきたということは話しています。魂の御名がカルサトルナスであるということも。」

「太古の国については?」

「いいえ。貴方が生まれたときに視えたことはそれだけで、あとは私だけの中に留めています。」

そう言ってナルは手を組んで力を入れた。今まで見たことのない二人の様子にサルスは考えることを忘れてひたすら見入ってしまう。そこに感情はなく、ただ目の前の出来事をその目に映しているかのようだった。

「俺が目覚めたということは動き始めたということだ。ナル、あの人はもう動いているのか?」

「いいえ。気配は感じないわ。」

「ならばナルを邪魔していたのはあいつになるな。…だが時間の問題だ、あの人も動き始めるときは近付いている。」