冗談ではないのはカルサの顔を見れば分かる。

睨み合い、退かずに詰め寄ろうかとしたが、カルサの意志の強さに聖は勝てなかった。

しかし抑えきれなかった感情が身体を動かし勢い良くカルサの胸ぐらを掴むとすぐに手を放して振り払う。

「くそっ!」

吐き捨てるように叫ぶと聖はそのまま部屋から出ていってしまった。

「聖!」

彼の名を叫び紅も後を追って部屋から飛び出していく。

残されたのはカルサとサルスの二人だけ、カルサの目は誰もを遠ざける悲しい色で染まっていた。

「聖!なあ、聖て!」

歩いているのにもかかわらず聖の進む速さは紅を近付けようとはしなかった。

走って走ってやっとの思いで聖の肩を掴む。

「待ってって!」

紅の手によって、ようやく聖は足を止めた。

背中越しに荒い呼吸の紅を感じる。

「どないしてん、聖。あんたらしない。」

紅の言葉に聖は何も応えなかった。