サルスに対する侮辱に聞こえたカルサは怒りを表に出した。ハワードが反応する前にそれを鎮めたのは貴未の言葉だ。これを機に二人の視線が蚊帳の外になっていた貴未へ集中する。

「口を出してすみません。」

いきなり発言をした事を大臣に謝罪しながらも貴未はカルサへ視線を戻し更に言葉を続けた。

「カルサ。それが御劔と普通の人との違いなんだ。俺からしても御劔は別格、ましてやお前は国王だ。」

「しかしサルスは王族だ。」

「だからだよ。」

カルサの思いと違う方向から二人の思いが入ってくる。その真意が分からずカルサは表情で理由を求めた。

「せめてサルスが王族じゃなければ、比較されずに済んだのかもしれない。王族だからカルサとの力や存在感を比べられてしまうんだって。」

同じ立場が故に、そう気付かされカルサの目が大きく開いた。

頭の中で様々な思いが駆け巡る。今までの自分の立ち振る舞い、考え、それら全てに何があったのだろうかと探れば御劔であることの影響がなかったとは言えないだろう。

公に好評こそしていないが国中の誰もが知る事実なだけに何も言えなくなる。

「だからサルスは影を選んだんだろ?」

何故だか貴未の言葉は素直に溶けこんできた。きっと大臣より近い位置でサルスと接していたという確信がカルサの中にあるからだろう。その言葉をきっかけに、感情的になりすぎて受け入れ損ねた大臣の言葉の意味を深く考え始めた。

そんな中で大臣は黙り込んでしまったカルサの様子を見て確信する。

「言えない理由。殿下は知らされずにいて、貴未は知っているという事ですね?」

厳しい視線は再びカルサに向けられた。

「生前、ナル様は私に仰いました。貴方はこちら側に来てはいけない、命を落とすからと。」

あの時のナルとのかけあいを鮮明に思い出す。寂しげな表情はこの事態を予期していたからなのだろうかと思えば強引にでも尋ね聞いておけばよかったとハワードは後悔した。

「言わんとしている事は分かります。しかしこの状況で通用しますか?」

「大臣。」