王族が国を治める緑豊かなシードゥルサ。
この地に田畑を築いたのは遠い先祖たち。
この地に城を築いたのは、この地で旗を掲げたのは全て彼らの志からなるもので今ここで人々が暮らしていることこそが彼らの誇りだとそう感じていた。
代々受け継がれた国旗を今この地で掲げているのは現国王カルサ・トルナス、そして彼を支えてきた秘書官サルスパペルト・ヴィッジだ。
幼い頃に王位を継承したカルサはサルスと手を取りあって懸命に国を治めてきた、二人で作り支えてきたのが今のシードゥルサ王国である。しかし対となっていた力は二分され、一つは消えようとしていた。
国を出ていくカルサなのか、その身の危うさに怯えているサルスなのか、どちらなのかは誰にも分からない。もしくは二つとも消えてしまうかもしれない予感を抱えてもいた。
勿論そうなって欲しくはないと願う者は数えきれない。特に強く願う者の一人が国の大臣であるハワード、その人だった。
カルサと貴未は伝えなくてはいけない事実を持ってハワードの許に訪れている。各大臣に当てられた個室の中で最も広い場所を使用しているハワードは今日もその部屋で執務をしていた。
「そうですか、ナル様が亡くなりましたか。」
想像していたよりも素直に事実を受けとめて目を閉じる。いつものように責務をこなしている中での訃報に動揺する様子もなく、手元にあった本を静かに机の上においた。
そして放ったのがさっきの言葉だ。
「思ったより落ち着いているな。」
それはカルサの素直な感想だった。貴未も同意するように頷くとハワードは微かに笑みを見せる。その姿に思わず目を奪われた。彼が笑うところを見たのはいつ以来だろうか。笑う姿が思い出せないほど遠い昔だという事は間違いなかった。
「ナル様とは長い付き合いです。その分思いが深い。だからでしょうか、会いにきてくれました。」
「ナルが…。」
最後の挨拶に、その言葉をカルサは静かに飲み込んだ。
それは明らかに今までと違う空気をまとうハワードの姿が穏やかだったから。亡くなった人を想う、どこか切ない表情ではなく、ただ懐かしい人を愛しく思う顔付きだった。彼にしてみればいつもと変わらない挨拶だったのかもしれない。
とにかくハワードの中でナルの死は受け入れられたものだということだけは伝わってきた。
この地に田畑を築いたのは遠い先祖たち。
この地に城を築いたのは、この地で旗を掲げたのは全て彼らの志からなるもので今ここで人々が暮らしていることこそが彼らの誇りだとそう感じていた。
代々受け継がれた国旗を今この地で掲げているのは現国王カルサ・トルナス、そして彼を支えてきた秘書官サルスパペルト・ヴィッジだ。
幼い頃に王位を継承したカルサはサルスと手を取りあって懸命に国を治めてきた、二人で作り支えてきたのが今のシードゥルサ王国である。しかし対となっていた力は二分され、一つは消えようとしていた。
国を出ていくカルサなのか、その身の危うさに怯えているサルスなのか、どちらなのかは誰にも分からない。もしくは二つとも消えてしまうかもしれない予感を抱えてもいた。
勿論そうなって欲しくはないと願う者は数えきれない。特に強く願う者の一人が国の大臣であるハワード、その人だった。
カルサと貴未は伝えなくてはいけない事実を持ってハワードの許に訪れている。各大臣に当てられた個室の中で最も広い場所を使用しているハワードは今日もその部屋で執務をしていた。
「そうですか、ナル様が亡くなりましたか。」
想像していたよりも素直に事実を受けとめて目を閉じる。いつものように責務をこなしている中での訃報に動揺する様子もなく、手元にあった本を静かに机の上においた。
そして放ったのがさっきの言葉だ。
「思ったより落ち着いているな。」
それはカルサの素直な感想だった。貴未も同意するように頷くとハワードは微かに笑みを見せる。その姿に思わず目を奪われた。彼が笑うところを見たのはいつ以来だろうか。笑う姿が思い出せないほど遠い昔だという事は間違いなかった。
「ナル様とは長い付き合いです。その分思いが深い。だからでしょうか、会いにきてくれました。」
「ナルが…。」
最後の挨拶に、その言葉をカルサは静かに飲み込んだ。
それは明らかに今までと違う空気をまとうハワードの姿が穏やかだったから。亡くなった人を想う、どこか切ない表情ではなく、ただ懐かしい人を愛しく思う顔付きだった。彼にしてみればいつもと変わらない挨拶だったのかもしれない。
とにかくハワードの中でナルの死は受け入れられたものだということだけは伝わってきた。